みちのくトレイルクラブの理事、加藤正芳の著書が発行されます。加藤は、長く歩く旅を愛するハイカーであり、みちのく潮風トレイル誕生のきっかけとなった加藤則芳さんの弟でもあります。タイトル『みちのく潮風トレイルを歩く〜全線1,025kmを踏破して』にある通り、この本は、加藤が2016年から2021年の5年間弱、みちのく潮風トレイルをセクションハイクで歩いた日々の記憶が詰め込まれています。亡き兄の願いを胸に、全線踏破に挑みました。もともとは、加藤が2021年9月から約半年間、東北の道の駅の公式ウェブマガジン、『まいにち・みちこ』に連載していた記事を書籍化したもので、一部修正を加え、書き下ろした原稿もあります。
※「みちのく潮風トレイルを歩く~全線1,025kmを踏破して~」は、みちのく潮風トレイル 名取トレイルセンター内のギアショップ TRAIL GATE、及びTRAIL GATEオンラインショップにて2023年8月8日より販売しています。
発行日はNPO法人みちのくトレイルクラブが6周年を迎える、2023年8月8日と決めました。NPOの設立を決めたのは、2015年からみちのく潮風トレイル運営計画策定に携わった現代表の佐々木豊志、常務理事の相澤久美、そして、加藤則芳さんと一緒に信越トレイルを作り、みちのく潮風トレイル構想当初からアドバイスをしてくれていた、信越トレイルクラブの現代表理事、木村宏氏の3人。運営計画策定のため、各地でヒアリングや会議を続ける中、「誰かが責任取らなければ、この道は続かない」、という切実な思いで踏み切りました。仙台空港に向かう暗闇の中、車中3人で相談し、決断した夜を忘れません。そして、「加藤則芳さんの想いを引き継ぐため、正芳さんにも理事に就任を」、との木村氏からの提案を受け、4人目の理事として、加藤正芳に就任をお願いしました。2017年6月4日に設立総会をし、8月8日にNPOとして認定されてから、丸6年経過します。
6年経って、いつの間にか職員は9人になり、頼もしい仲間が増えました。お手にとっていただければお分かりいただけると思いますが、この本の編集・デザインは、全てNPO法人みちのくトレイルクラブの職員が手掛けています。つまり、編集・デザイン・DTP全て素人集団で形にしたわけです。
膨大な写真や原稿を整えた松川、初めてインデザインに挑んだ新入社員の岡は、実に2ヶ月以上、加藤と細かなやりとりを繰り返し、この本の制作に没頭しました。イラストレーター初心者の柳田も表紙ほか特殊ページを担当しましたが、「そんな機能も知らなかったのか!?」と驚くくらい原始的な技術のみで頑張りました。Google先生にイラストレーターやインデザインの使い方を聞きながらの毎日。新人たちの粘り強さを知りました。職員の中で唯一デザイン・編集経験のある私も時間を見つけてはチェックし、修正等にも付き合いましたが、そうそう時間も取れず、全くの素人である松川、柳田、岡の3人でほとんどの作業を進行。著者の加藤も、細かな確認修正作業に最後まで一緒に時間を費やしました。終盤、他の職員全員で文字校正を行い、みんなで育てる道ならぬ、みんなで初めて生み出す書籍、となりました。かつてウェブ版への記事掲載を担当してくれた、元職員の中村美幸(旧姓:西澤)さんにも感謝です。
そして、今、まさにこのテキストを書いている横で、岡がこれから入稿します。何百冊も印刷するから、間違いがあっては大変ですが、肝の座った娘です。淡々と作業をしている姿はなんと頼もしいことか。
この本の出版を決めたのは、加藤則芳さんの想いを背負い、みちのく潮風トレイルを歩いた加藤正芳の記録を形にすることで、加藤則芳さんの願いも同時に形にし、後世に残せるのではないかと思ったからです。私たち職員は、加藤則芳さんにお会いしたことがありません。もうお会いすることもできません。今のみちのく潮風トレイルの状況を報告することも、感謝を伝えることもできません。でも、その気持ちは持ち続けたいと思います。信越トレイルが毎年、「加藤則芳メモリアル」として信越トレイル開きを開催するように。加藤さんが願った、ロングトレイルの普及を通した環境保全の意識醸成や、人と自然と社会のあり方についての考えを繋ぎ、深めていきたいと思います。
加藤さんの想いを引き継いで、道づくりに取り組んだ環境省の皆さん、過去に、そして今現在MCTに協力してくださる数えきれないくらい多くの皆様の努力にちゃんと応えられるよう、そして改めて感謝の意を伝えるためにも、7年目を迎える8月8日、『みちのく潮風トレイルを歩く〜全線1,025kmを踏破して』を発行し、職員一同、初心忘れることなく、引き続きみちのく潮風トレイルの運営に取り組んでいきたいと思います。
加藤正芳・著『みちのく潮風トレイルを歩く〜全線1,025kmを踏破して』、お読みいただければ嬉しいです。(文責:相澤久美)