以前SNSでもこのイベントの下見ハイキングの様子をご紹介したこともありましたが、先月10月12日(土)〜14日(月)の三連休に「テント泊ハイキングイベント」を開催しました。
相馬市松川浦環境公園から亘理駅までの約66km(実際にはキャンプ場への往復などで約80kmになりましたが)をテント泊で2泊3日で歩く、みちのくトレイルクラブとしては初めての宿泊を伴うハイキングイベントでした。
毎月開催している「数珠つなぎハイキング」と同様に、名取トレイルセンター管轄エリアの魅力再発見、トレイル沿線の地域の方たちへの認知拡大、イベントを通じてのコミュニティ作りなどを目的にしながらも、テント泊でこの区間を歩けることの実証、参加者の皆さんにトレイルマナーについて改めてレクチャーを行う、という目的もありました。
一日の行程は約25km、テント泊装備を担いで鹿狼山や深山、四方山の山歩きもあるので、初めてテント泊を体験される方たちに積極的におすすめすることも難しく、テント泊で歩くハイカーは既にこの区間は歩いていそうだし、そうなるとこのハイキングイベントに参加してくれる方はいらっしゃるのだろうか、などと募集を開始してから不安になったりしましたが、それも杞憂に終わり、結果的には定員6名に対して5名の方が参加してくださいました。
2023年、2024年にPCTを歩いた遠藤篤史さんに運営のお手伝いをお願いして、総勢7名のハイキングになりました。
参加の理由はそれぞれではありましたが、「歩き始めの頃に歩いたセクションなので今の自分が歩いたらどうなのかもう一度歩き直してみたい」「他のMCTファンとの会話を楽しみたい」「グループでのテント泊ハイキングが楽しそう」「いつも一人で歩いていたのでみんなで歩きたい」など割と皆さんが近い理由で参加してくださっていました。
旅の記録
■DAY1
相馬駅集合→福島交通 相馬営業所→(バス)→松川浦環境公園→(HIKING)→鹿狼山麓キャンプ場(テント泊)〈約25km〉
松川浦環境公園に福島交通のバス(8時6分発)で移動。オンラインやトレイルセンターでの対面で既に「みちのく潮風トレイル憲章」やハイキングで注意すべきことのレクチャーは終わっているので、自己紹介の後に記念撮影をして早速出発。心配していた天気は好転して快晴で、10月だというのにまだまだ暑く、ショートパンツを履いてくればよかったと後悔するぐらいのお天気でした。
相馬の市街地では船橋屋さん、鳥久さんで買い物をしたりその場で食べたり、スタンプを押したりのやや食べ歩き旅のようになりつつ、千客万来館で休憩したり相馬市の担当の方とお話ししたり、相馬中村神社でお参りしたり、とちょっとずつ刻みながら歩き、トレイル上のヨークベニマルでランチを買ってイートインで食べて、この日の夜、翌朝の食料の補給をしました。
「ビールはいつ買うのがいいのか?」問題が勃発するも、鹿狼の湯の入浴後に館内の自動販売機で買うのがよかろう、ということで落ち着きながらも、そんな話をするうちに天気も良くてビールを飲みたくなってしまったのでノンアルコールビールをランチに投入、気持ちだけプシュっとやってみました。
前半にゆるめなイベントがいろいろありながらもこの時点で歩いた距離はまだ7.5kmほど、まだまだ先は長いです。前回の数珠つなぎハイキングではゴールだった駒ヶ嶺駅分岐点まで歩いてもまだ10kmほどの道のりが残っています。新地町に入ってからはショートカットをしたい誘惑を退けながらルートに忠実に歩き、途中のコンビニでコカ・コーラやガリガリくんを注入して各々ブーストしました。
あぐりやさんに立ち寄った時、かぼちゃを納品しに来た地元の方に話しかけてもらって、飯舘村から移転されたお話などをお聞きしながら最後にはかぼちゃの煮付けをみんなでご馳走になってしまいました。甘しょっぱくて美味しかったです。この先の6kmを歩く元気をいただきました。
日中の暑さとイメージが合わないのですが、日没はやはり10月の季節なりに早く、4時になるとやや心細い光加減になってきます。みんなで励ましながらこの日の宿泊先のキャンプ場にたどり着いたのはぎりぎり日が残っている時間帯でした。テントを設営して、既に暗くなってしまった中を15分ほど歩いて鹿狼の湯へ。一瞬お風呂に行くのが面倒くさく感じて迷ったのですが、とても気持ちよくて行って良かったです。そして本物のビールをプシュっ!
夜はキャンプ場内にある炉台がある小屋で、夕食からのトレイル談義飲み会でした。楽しくて皆さんお酒が進んでいたようでした。
尚、こちらのキャンプ場ですが、新地町地域おこし協力隊の方とそのご家族が2025年春オープンに向けて準備中のキャンプ場です。トレイルルートからは500mほどの近さです。今回は特別にお願いして宿泊させていただきました。こちらではキャンプ場作りのボランティアも募集していますので、気になる方はみちのくトレイルクラブまでご連絡ください。
■DAY2
鹿狼山麓キャンプ場→(HIKING)→鹿狼山→山元町・casano-vaキャンプ場(テント泊)〈約28km〉
朝は5時頃からそれぞれ動き出し、朝6時30分前にキャンプ場を出発。出発前にオーナーのご家族からコーヒーの差し入れがあり、嬉しくいただきました。お世話になりました!
朝一番の山登りは気持ち良かったです。とは言え既に山頂まで行かれた方たちとかなりすれ違いました。途中で抜きつ抜かれつになった地元の方は毎日鹿狼山に登っているそうで、整備もされているとのこと。お話をするうちに、下見の時にも山頂でお話ししていろいろ教えていただいた方でした。
山頂に着いた時の景色はいつもにも増して素晴らしかったです。皆さんからも歓声があがって、こちらまで嬉しくなってしまいました。太平洋を見れば昇りたての太陽できらきらと光り、蔵王方面を見れば一面の雲海。なかなか見れる景色ではありません。スタート地点の相馬市松川浦も見えて、あそこから歩いて来たんだね、と感慨深いものがあります。
天気も良く適度な風もあったので、それぞれテントを引っ張り出して夜露や結露を乾かしました。
それぞれの歩き方の工夫などを共有したりしながら鹿狼山の稜線歩きを楽しみ下山、この日の前半のお楽しみのパン屋さん「ボヌールやすひろ66」へ。ランチ用に買ったパンもその場で食べてしまい、何度も買い足しに行く人が続出で、鹿狼山を下山しての休憩も兼ねてかなりゆっくりさせていただきました。
どの調理パンも菓子パンも美味しくておすすめです。土曜日は定休日なのでご注意ください。
新地町から宮城県山元町に入る県境で盛り上がったりしながら暑い日差しの中を歩き、磯崎山公園でパンランチを取り、震災遺構中浜小学校へ。鹿狼山を超えて来たとは言えまだ先は長いです。メンバーにやや疲労感が見え始め「坂元駅から電車で山下駅までスキップする」と言う不届きな(笑い)提案も出始めた頃、調査員としてみちのく潮風トレイルスルーハイクを終えたばかりの伊東さんが、バックパック肩掛けのレイ・ジャーディン*スタイルで颯爽と反対側から歩いてきました。山下駅まで一緒に歩いてくれることになった伊東さんのただならぬオーラに僕たちのテンションは一気に上がり、延々と続くその後のバイパス歩きもなんとか歩き切ることが出来たのでした。メンバーの中には伊東さんのポッドキャストのヘビーリスナーでお便りを出したこともある、という方もいて記念撮影をされていました。その様子を写真に取り忘れたのが悔やまれます。伊東さんとは残念ながら山下駅でお別れしました。
山下駅のスーパーではこの日の夕食やお酒の買い出しをしました。お惣菜やお寿司を買い込んでショッピング袋をぶら下げた僕たちの姿は、キャンプ場に向かうハイカーというより部屋飲みを楽しみにホテルに帰るビジネスマンのようだった、というのはここだけの話です。
この日のキャンプ場「casano-va」さんは山元町の笠野地区にあるキャンプ場です。トレイルルートからは2kmほどの立地です。海外からのMCTハイカーの間でも評判になっていて、このキャンプ場に泊まることが目的のひとつだったというハイカーの話も聞いたことがあります。キャンプ場の施設のみならず、オーナーの斉藤さんのお人柄もあるのでしょう。この日も僕たちのために、キャンプ場の一角を広々と空けてくださっていました。こっそりとスイカの差し入れまでしてくださいました。
ありがとうございました!
そして、この日の夕食からの飲み会は、思う存分補給が出来たこともあり潤沢なアルコールで更にボルテージが上がり、ハイキングやギアの話で盛り上がったのでした。
※レイ・ジャーディン・・・ウルトラライトハイキングの源流とも言うべき伝説のハイカー。
Hiker’s Depotのブログに詳しく書かれていますので、こちらもぜひお読みください。
■DAY3
casano-vaキャンプ場→(HIKING)→深山→四方山→亘理町・亘理駅(GOAL/解散)〈約19km〉
こちらでも出掛けにモーニングコーヒーをいただいてしまいました。ありがとうございます!
この日も6時30分頃に出発。またまた暑い一日になりそうです。
3日目のメインイベントは、深山、四方山の山歩きです。当初予定では岩沼駅までの行程を考えて下見をしてみましたが、想像したより大変だったので、3日目最終日ということもあり本番では亘理駅まででゴールと少し距離を短くしました。
深山、四方山の山歩きは距離もある程度あり、歩くたびに「こんなにアップダウンあったっけ」「まだこれしか歩けてないのか」といつも同じことを思います。地元の有志の方たちが定期的に整備をしてくださっているので、いつ歩いてもとても歩きやすいです。名取トレイルセンター区間では鹿狼山と並んで自然の中を歩くことが出来て、海側も山側も眺望を楽しむことが出来る貴重なルートです。
やや長い稜線歩きも、みんなでわいわい言いながら歩いていたらいつの間にか下山口の近くまで来ていました。
そして亘理駅で無事にゴールしました。
最後は仙台方面の電車に間に合わせようと少し急ぎ足だったりしましたが、全員で安全に亘理駅まで歩くことが出来て、本当によかったです。
ハイキングイベントを終えて
このハイキングイベントが終えた後の印象をひと言で表すとしたら・・・ちょっとおおげさですが、「熱狂」です。
MCTを愛する方たち同士、トレイルルートを歩くうちに7人のメンバーの中に一体感が生まれ、辛い時には励まし合い、出会った人や素晴らしい景色といった楽しいことはみんなで共有し、毎夜の懇親会も楽しさが増し、二泊三日はありましたが、とても楽しい旅になりました。ほぼ初対面だった参加者の皆さん一人一人の、「このイベントを安全で楽しいイベントとして成功させよう」という気持ちが日を追う毎にどんどん大きくなって結びつき、その気持が熱となってこのハイキングイベントが盛り上げてくれました。
そんな雰囲気は数ヶ月に及ぶアメリカのロングトレイルハイキングの中で生まれるトレイルファミリーのようでもありましたし、参加者のTさんがおっしゃっていたように同じ年にロングトレイルを歩いたハイカー同士が呼び合う「クラスメイト」のような結びつきにもなったように思います。そのメンバー同士の結びつきが、イベント終了後の有志による懇親会のころに至っては熱から熱狂レベルまで引き上がっていたように感じました。
最初に考えていた「目的」については
・名取トレイルセンター管轄エリアの魅力再発見⇒里や街を歩くセクションと山を歩くセクションのバランスが良く、ロングトレイルを歩くことの楽しさが味わえるエリアだと再認識出来た。
・トレイル沿線の地域の方たちへの認知拡大⇒こうしてグループでテント泊装備で歩くことで地域の方の目に止まっていたように思いましたし、実際に声をかけていただいて話し込む場面もたくさんあり認知拡大が出来た。
・イベントを通じてのコミュニティ作り⇒当初の目的以上の結びつきが出来た!
・テント泊でこの区間を歩けることの実証⇒キャンプ場の方たちのご協力により楽しくテント泊で歩けた。
・参加者の皆さんにトレイルマナーについて改めてレクチャーを行う⇒オンラインで予めレクチャーを受けていただきましたが、トレイル上や夜の食事の時などにもそういったことをお互いに一方的ではない意見交換をする場を作っても良かったと少し反省しています。
と、一部反省がありながらも、概ね達成出来たと考えています。
みちのくトレイルクラブ主催のイベントとしては初めての宿泊を伴うハイキングイベントであり課題や改善点もまだまだありますが、参加者の皆さん(もちろん運営側でお手伝いいただいた遠藤さんもです!)に本当に助けられて成立した三日間でした。主催者側の僕もとても楽しませていただきました。
参加者の皆さま、ご協力いただいたキャンプ場の皆さま、ありがとうございました!
MCTと同様に「皆で育てるハイキングイベント」になりました。
(記事担当:板谷 学)