2025年9月からCalifornia Conservation Corp(CCC:カリフォルニア・コンサベーション・コー)が来日し、みちのく潮風トレイル上のメンテナンスを協働で行いました。
今回はCCCとの協働トレイルメンテナンスから「大船渡市_綾里崎編③」を詳しくレポートしていきます。
概要
日時:2025年9月24日(水)、9月28日(日)、9月30日(火)
場所:大船渡市_綾里崎
主催:認定NPO法人みちのくトレイルクラブ
共催:一般社団法人大船渡地域戦略
協力:NPO法人信越トレイルクラブ、奥ジャパン株式会社、日本航空株式会社
協賛:さいとう製菓株式会社、大船渡温泉(株式会社海楽荘)
後援:環境省東北地方環境事務所、岩手県、大船渡市、みちのく潮風トレイル関係自治体協議会、三陸ジオパーク推進協議会、三陸鉄道株式会社、株式会社東海新報社、株式会社IBC岩手放送
参加者:ハイカーや地域住民の方々、地元通訳の方々、CCC、上記記載の方々
内容:
9月24日(水) トレイル調査
9月28日(日) トレイルメンテナンス(『Trail Maintenance Meeting 2025』in 大船渡 )
9月30日(火) トレイルメンテナンス
綾里崎とは
大船渡市の綾里崎は、太平洋を望む断崖絶壁が続く、トレイル屈指のダイナミックな景勝地です。太平洋に突き出したダイナミックなリアス海岸の景観を楽しめる本格的なハイキングコースとして知られています。「綾里(りょうり)」という地名は、かつて良質な絹織物(綾織)を産したという伝説や、アイヌ語由来説など、豊かな文化背景を持っています。
岬の先端に立つ綾里埼灯台は、航路の難所を見守る重要な拠点であり、トレイルの象徴的なチェックポイントになっています。綾里崎周辺はリアス海岸特有の急峻な地形により、人の手が入りにくい原生に近い森が残っていて、トレイル中にはカモシカやシカ、キジなどの野生動物に遭遇することも珍しくありません。
2025年、綾里崎周辺の山林で大規模な火災が発生しました。強風の影響で火が広がり、貴重な植生やトレイルの路面、案内看板などが一部焼失しました。2025年6月9日にトレイルは再開され、ハイカーが少しずつ戻ってきています。一方で現在も復旧作業は進められています(2026年1月現在)。
トレイル調査
まずはCCCのメンバーらとともに綾里崎のトレイルを調査しました。
林野火災でどういうことが起こったのかを説明しながら、綾里崎全体を歩いてもらいました。
最後にメンテナンス予定の箇所について、詳しく調査をしました。


トレイル上の課題とメンテナンス計画
今回は綾里崎の田浜地区をメンテナンスすることとしました。
メンテナンスをしたのは全部で4箇所です。
メンテナンス箇所A

最初のメンテナンス箇所はこの階段。
元々は何もない斜面だったのですが、勾配が大きく足元が悪いということから、地域の住民の方が階段を設置してくださいました。設置から数年が経過しており、少し課題が出てきた箇所です。
具体的な課題は下記の通りです。
- 階段として設置した岩が所々不安定である
- 階段が急勾配である
- 周りが藪で覆われている
- 階段下のトレイル上に小さな川が流れ込んでいる
メンテナンス箇所Aについては、次の方針で取組むこととしました。

- 周りの藪を最小限刈る
- 階段下を流れている水(上図の青色で示したもの)について、分岐点を探し、トレイルに水が流れこまないように施工する
- 階段について、不安定になっているものを組みなおす
- 階段について、途中に踊り場を設けて、2段階で上がれるようにし、勾配をゆるくする
メンテナンス箇所B

こちらは先ほどの階段の直下に設けられた橋。
階段と同様に、数年前に地域の住民の方が設置してくださったものです。
橋の真ん中は半分折れた状態で、歩くたびにしなっており、いつ橋が落ちてもおかしくない状態です。
- 橋として設置した木材がかなり不安定である
- 周りが藪で覆われている
メンテナンス箇所Bについては、次の方針で取組むこととしました。
- 周りの藪を最小限に刈る
- 元ある橋を取り外し、丸太を組み合わせた橋を組む
メンテナンス箇所C

ここは、水が集まりやすい地形で、トレイルの山側(写真向かって左)から水が湧き出ており、それがトレイル上に流れ込んでいます。
その状態でハイカーが多く行き交うため、水と土砂がこね繰り返され、路面がぬかるんだ状態になっています。
- トレイル上に水が流れ込み、路面がぬかるんでいる
メンテナンス箇所Cについては、次の方針で取組むこととしました。
- 周りの藪を最小限刈る
- 水が湧き出ている箇所を特定する
- 側溝や水切りを設置して、トレイル上から水を排水する
メンテナンス箇所D

ここは今回のメンテナンス箇所の中で最も苦慮した場所です。
メンテナンス箇所Cと同様にトレイル上に水が流れ込んでいるのですが、その水量ははるかに多く、ぬかるんでいるというよりはトレイル上に小川が流れていると言った方が正確かもしれません。あたりは藪に包まれていて、どこから水が流れ込んでいるのかも調査の段階では特定することができませんでした。また、トレイルの周辺には水に押し流れたと思われる大木や土砂などが堆積しています。
- トレイル上に大量の水が流れ込んでいる
- 周りが藪で覆われている
- トレイルの周辺に、大木や土砂などが堆積している
メンテナンス箇所Dについては、次の方針で取組むこととしました。
- 周りの藪を最小限刈る
- 水が流れ込んでいる分岐点を特定する
- 側溝や水切りを設置してトレイル上の水を排水する
- 堆積した大木や土砂のうち、通行の妨げになりそうなものを除去する
- ぬかるんだ路面に石や砂利を敷く
メンテナンス作業とその後の経過
メンテナンス作業は、2025年9月28日(日)、 9月30日(火)の2日間にわたって実施しました。
9月28日(日)については、「『Trail Maintenance Meeting 2025』in 大船渡 」というイベントの中で実施しました。ハイカーや地元住民の方々、多くの企業や自治体・行政の方々にご協力いただいて、一気にメンテナンスを進めることができました。


メンテナンス箇所A
- 周りの藪を最小限刈った
- 階段下を流れている水について、分岐点を探したが特定が難しく、また地形的にもトレイルに水が流れこまないように施工するのも困難だった。そのため、水路を整えながら、コンクリートブロックの穴に水路を通し、その上をハイカーが歩けるように工夫した
- 階段について、不安定になっているもののみを組みなおす予定だったが、いずれも不安定であったため、全て下から積み直しステップを土で踏み固めた
- 階段について、途中に踊り場を設けて、2段階で上がれるようにし、勾配をゆるくした

2025年9月24日

2025年9月30日

こちらは整備後に上から撮った写真です。
ステップがかなり広くなり、視認性もよく、安全に上り下りできるようになったことが分かります。
メンテナンス箇所B
- 周りの藪を最小限に刈った
- 元ある橋を取り外し、丸太を組み合わせた橋を設置した

2025年9月24日

2025年9月30日
メンテナンス箇所C
- 周りの藪を最小限刈った
- 水が湧き出ている箇所を特定した
- 側溝と水切りを設置して、トレイル上から水を排水した。整備後はまだ路面が乾いていないが、排水がうまく機能すれば乾いた路面になってくると予想する

2025年9月24日

2025年9月30日
メンテナンス箇所D
- 周りの藪を最小限刈った
- 水が流れ込んでいる分岐点を特定した
- 側溝や水切りを設置してトレイル上の水を排水した
- 堆積した大木や土砂のうち、通行の妨げになりそうなものを除去した
- ぬかるんだ路面に石や砂利を敷いた

2025年9月24日

2025年9月30日
トレイルメンテナンス1日目、『Trail Maintenance Meeting 2025』当日は、始めに周りの藪を刈り、堆積した土砂を除去しました。作業を進めていたところ、突然トレイル下からU字溝が姿を現しました。どうやら、このエリアはもともと川が流れていて、暗渠としてU字溝が設置されていたようです。U字溝の入り口と出口を確認しようとしたのですが、藪が深く、土砂の堆積も多かったため、この日はU字溝の全貌を明らかにするのはあきらめました。一旦、水がU字溝に流れるように誘導し、それでもあふれ出る水は、トレイルの谷側にある川に流れ込むように施工しました。

トレイルメンテナンス2日目、この日は藪を払い土砂の堆積を除去しながら、U字溝の入り口と出口を確認することに着手しました。先が見えない作業でどのくらい時間がかかるか分かりませんでしたが、ほどなくして、U字溝の入り口が見つかりました。

U字溝の入り口が見つかったため、詰まりを取り除き水路を整え、水が確実にU字溝に流れ込むように施工しました。トレイル上からはあっという間に水が引いていき、少しずつ路面も乾いていきました。もし川が増水し、U字溝からあふれ出た場合にも、トレイル上に水が流れ込まないように、U字溝の合わせて水切りを設置しました。

2025年9月28日

2025年9月30日
まとめ
「CCCとの協働トレイルメンテナンス_大船渡市_綾里崎編③」についてご紹介しました。
石階段の積み直しや、朽ちていた橋の丸太への架け替え、さらには詰まっていた排水路を清掃して泥道を解消するなど、一つひとつ丁寧に修繕しました。
今回、地域の方やハイカー、行政や企業の皆さまなど、この道を愛する多くの方々が協力してくださいました。林野火災からの復興を願う皆さんの温かい想いが形になり、より良いトレイルへと生まれ変わりました。

記事担当:松川亮太
