みちのくトレイルクラブより

階上岳でトレイル整備実地研修会を開催

2023/10/26 みちのくトレイルクラブ
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10月16日~18日の3日間で、階上岳のトレイル整備実地研修会を開催しました
(地球環境基金助成事業の活動の一環)。

1. トレイル整備実地研修会とは

近年の度重なる豪雨や台風による被害、オーバーユースなどにより日本の登山道は荒廃が進んでおり、みちのく潮風トレイルも例外ではなく、すでに一部で崩落やガリーの発生が確認されています。

みちのくトレイルクラブは、そのような背景を受け、みちのく潮風トレイルを歩きやすい状態に維持しながら、環境を保全していく活動に今年度から本格的に取り組み始めました。

環境を保全するためには、環境が荒廃するスピードを保全活動が上回る必要があるのですが、現状ではまだ十分ではありません。保全活動をさらに進めるためには、保全活動に理解協力してくださる多くの方々の力が必要です。

今回は、多くの方々にみちのく潮風トレイルの保全活動に参加してもらえる形をつくるために、保全活動のリーダー育成を目的としたトレイル整備実地研修会を開催しました。

2019年台風19号時の様子

2. 階上岳の現状

階上岳は青森県階上町にある標高約740mの山で、みちのく潮風トレイル上では最も標高が高く、地元の方も含め多くの登山客が訪れます。その分、踏圧の影響で地表面が削られている箇所が多く、いくつかガリーの発生やトレイルの複線化などが事前調査で確認されていました。

階上岳は登山客の利用が多く、現在の状況を放置しておくと荒廃が進むことが予想されたので、今回はこの階上岳を研修会の場所として選びました。

トレイル脇で大きな崩落が確認された
裸地化が進み、土砂が流出している
土砂が流出し、地中の岩が露出している
土砂が深く削られ、木の根が露出している
木の根が露出し歩きにくくなったため、左側に複線ができている
トレイル脇にできた水路。放っておけば土砂を流出し、崩壊を招く
トレイルの複線化。階上岳山頂付近に多く確認される

3. 「階上岳_トレイル整備実地研修会」の概要

  • 日時:2023年10月16日(月)~10月18日(水)
  • 場所:階上岳_しるし平付近の登山道
  • 主催:NPO法人みちのくトレイルクラブ
  • 講師:北杜山守隊(山梨県北杜市)の方々
  • 参加者:サテライト施設のメンバー3名(リーダー)、八戸自然保護官事務所と階上町の方々
  • 内容:
    [1日目] 自然観察会
    [2日目] イメージ共有、作業、振り返り
    [3日目] トレイル調査(種差海岸)

4. 「階上岳_トレイル整備実地研修会」の詳細

講師には北杜山守隊の方々をお呼びしました。また、リーダーとしてサテライト施設のメンバー3名と、オブザーバーとして八戸自然保護官事務所と階上町の方々にご参加いただきました。みちのくトレイルクラブからは、事務局長の相澤、トレイル運営事業部の森と私の三人が参加し、総勢11名での作業でした。

[1日目]

初日は登山道がどのように崩れ自然環境に悪影響を及ぼすのか、その原因を学ぶ自然観察会を実施しました。登山道の侵食には、登山者の踏圧で植物が生えなくなり裸地化したのちに、登山道に水が集まり水路となることで土砂が流されるというパターンがあります。実際の登山道を観察しながら、そのメカニズムを学ぶことができました。

トレイルの浸食の原因について解説する講師の勝俣さん

2日目に整備する場所は、土砂が流出し、木の根が地表に現れたこの場所に決定です。
周りの地面の様子から、以前は木の根が完全に隠れる高さまで土壌があったのが推察されます。はたして2日目の保全活動でどれほど回復するでしょうか。

整備実地の場所に決定した場所

[2日目]

この日は実際にステップを組んでいきます。
まずは細い枝を使い、出来上がりのイメージを皆で共有します。

出来上がりのイメージを皆で共有する

必要な丸太の数と長さを確認し、倒木を切出して丸太を用意します。
登山道の下から丸太を置きステップの位置を決めます。
その後に枝、枯葉、土砂の順にステップの間を埋めていきます。
ステップ組みの詳しい工程は、北杜山守隊での保全ワークショップに参加した際のブログにも載せてあるのでご確認ください。
「登山道保全ワークショップ」の参加レポート

丸太を切出す
枝、枯葉、土砂の順にステップの間を埋めた後に整地する

約10メートルほどの登山道を4時間ほどで整備しました。
途中から皆さん作業に手慣れてきて、思ったよりスムーズに出来上がりました。

Berore
After
作業の様子

[3日目]

3日目は、種差海岸のトレイル調査を実施しました。

種差海岸エリアのトレイル調査

トレイルの状態は比較的保たれていましたが、一か所気になる箇所がありました。多くの人がトレイルを外れて歩いているため、裸地化が進み土砂が流出しています。右端の岩の上にわずかに残った土砂と植生が崩れるのも時間の問題だそうです。まずは、ルートから外れたところを人が入れないようにする仕掛けが必要です。

トレイルを外れて歩いているため、裸地化が進んだ箇所

感想と今後の展望

今回の研修を通じて、参加者の方々からは「トレイルを歩くときの見方が変わった」という声や「地元の地域でも実施してみたい」、「整備に参加して楽しかった」などの声をいただきました。

信越トレイルクラブ(長野県飯山市)や北杜山守隊(山梨県北杜市)が主催する保全活動などを視察した際には、多くのハイカーが遠方からも参加し楽しみながら活動されている様子を見ることができました。そのとき、このような保全活動に参加したいというハイカーや地域の方は確実に増えていると感じました。

ハイキングに限らず自然の中でのアクティビティは、利用と保全のバランスが常に課題として上がります。みちのく潮風トレイルが長く愛される道になるためには、利用促進の活動をするのと同時に、路体や周辺の環境保全を進めるのが私たちの大切なミッションと考えています。みちのくトレイルクラブでは、多くの人が保全活動に関われる仕組みを準備しているところです。ぜひ引き続き活動内容をご確認ください。

次回のトレイル整備実地研修会は、12月に釜石市での開催を予定しています。

整備を終えた後の集合写真

著者 : みちのくトレイルクラブ

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