みちのく潮風トレイルハイカーの皆さんから、歩くきっかけや道中の思い出などをお伺いしている「ハイカーズボイス」。
5回目は、2022年5月からMCTをセクションハイクで歩き始めて、今も着々と歩みを進めている山形県在住の宮地良治さんに寄稿していただきました。
宮地さんの”みちのく潮風トレイル愛”がいっぱいに詰まったブログをぜひお読みください。
(2024年5月31日に寄稿していただきました)
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山形の宮地です。まずは全線開通5周年おめでとうございます。この話をいただいて「まだ全線踏破していない私でいいのか」と思いながらも、私の感じている「みちのく潮風トレイル(MCT)」を思いのままにお話したいと思います。
Q:みちのく潮風トレイルを歩き始めた時期ときっかけ
歩き始めた時期は忘れもしない、「2022年5月29日(日)」です。その前週の5月21日に岩手のテレビ情報番組で丁度「山田~大槌ルート」の放送をしており、「こんなハイキングコースがあるんだ」と知りました。
私は三重県鈴鹿市から単身赴任していて、現在は山形県南陽市に住んでいます。当時は岩手県一関に住んでいて偶然テレビで知った感じです。またテレビを見たあと、ネットで調べて近くにルートがあることを知りました。実はその翌週、趣味のオフロードバイクの4時間耐久レースに参加することになっていて、「前週にちょっと距離を歩いて辛いことをしておけば、レースで楽かも?」と軽い気持ちで歩き始めたのがきっかけです。
その時チョイスしたのは、当時住んでいた一関から近い陸前高田市の広田半島で、BRT大船渡線の小友駅から南下で黒崎仙峡を回り、ぐるっと一日で一周するルートでした。当日は天気も良く、最初は「初MCT」を意気揚々と景色を見ながら楽しんで歩いていたのですが、段々足が痛くなってきて、16km程歩いたところで足が攣って「リタイア」しました。
ほんと、道路に倒れ込むほどの勢いで崩れ落ち、まわりに心配されないように取り繕ったことを覚えています。その後、休憩を繰り返し何とか小友駅まで戻りました。当時、自分では簡単に歩ききれると思っていたので、この気持ちと体の認識の差に愕然とし、体力不足を痛感。
ということで私のMCT初戦は惨敗、そしてそんな感じだったので案の定、翌週のレースも散々な結果でした(笑)。この悔しさから(レースの結果ではなく、足が攣ったことですけど)、レースの翌週には「みちのく潮風トレイル名取トレイルセンター」へ向かってました。
職員の方々と話をすると、どうも足が攣った原因がハイク時に履いていた山靴にあることがわかり、それ以降、勧められた「トレランシューズ」に変更(名取トレイルセンターもサテライト施設もですが、ハイク、ギアの相談に気軽に乗っていただけるのが素晴らしいです)。
そしてその日、マップとパスポートを購入して私の「最高のMCTライフ」が始まり、それ以降ギアもどんどん軽くなり、体への負担も減ってきたので足も攣らなくなりました。
Q:みちのく潮風トレイルにどんな魅力を感じていますか
魅力はたくさんありますが、以下に勝手に分類したいと思います。
①ルート上の絶景
先ずは素晴らしい景色です。
空と海の青色、木々の緑色(秋には紅葉)、冬には雪の白色、岩の茶色、このコンストラストが抜群で、ルート歩きながらいつも見惚れてしまっています。
MCTは北行、南行、四季折々で姿を変えるルートだと考えていて、少なくとも2(歩き方)×4(四季)で8通りの楽しみ方があると思っています。天候も入れたらまだ増えるので、なんて何回も楽しめるルートなんだと(笑)。
もちろん同じルートを何度歩いても新たな発見もあるので、リピートしてもいいですよね。
②楽しめるルート
絶妙なルーティングだと思います。
相馬、中村神社や多賀城址、参詣の道である金華山道、三陸の街道跡などの歴史を感じさせるルート。民家のすぐ脇を通り、暮らしの息遣いを感じる島歩き、島と島を人、生活を結ぶ渡船。漁港(今まで生きてきた中で一番漁港を見ました)や里山、都市部など人々の生活に密着したルート。浄土ヶ浜~北山崎~普代の大自然を感じるダイナミックなルート、心に刺さる各地の震災遺構を巡るルートなどどのルートをとっても良く考えられていて、その策略にハマり思い切り楽しんでます。
また、私は陸前高田市からMCTハイクをスタートし、北行/南行関係なく歩いていますが、南(松川浦)から、北(蕪島)からだけでなく、どこからでも気軽に始めることができ、それほど敷居が高くないのも魅力の一つだと思います。
③ハイク中に訪れる様々な出会い
地元方々との何気ない会話、各地域でいただける美味しい食事、宿泊する宿でのハイカー同士、女将との歓談、名取トレイルセンターやサテライト施設での職員の方々との情報、意見交換、この歩く旅で生まれる出会いすべてがさらに「みちのく潮風トレイル」の魅力を増していると思います。
またハイキングパスポート、ピンバッジもハイクの楽しさが増すアイテムです。スタンプ押すときに会話が始まりますし。スタンプはハイカー同士で押し合う「ハイカースタンプ」や何度も押すと併せた形が出来る「組合せ型」なんてあってもいいなって思ってます。
1回押すだけじゃもったいないので。ハイキングパスポートでリピーターを獲得するとか、楽しいですよね。
④自宅での楽しみ方
私の様なセクションハイカーは「歩いて戻る」を繰り返しますので、公共交通機関(鉄道、BRT、路線バス、コミュニティーバス、時にはタクシーや宿の送迎サービス)を駆使して如何に戻るかを考える楽しみがあるのも魅力です。
ウィークデーはマップと「にらめっこ」しながら「週末どう歩くか」を考えています。あと歩いた記録もエクセルに纏め、マップに蛍光ペンで足跡を記したり、みなさんのコミュニティーでの投稿を見て次回の参考にしたり、MCTアクリルスタンドやカレンダーを見てニヤニヤしたりといろいろ楽しんでます。
MCTはまさに「歩いて良し」「食べて良し」「泊って良し」「乗って良し」「考えて良し」「押して良し」です。この魅力をいろんな方々に伝えていきたいです。
Q: 歩いていて心に残るヒト、モノ、コト、出来事など
私はご存知の方もいますが人とお話しをすること、いわゆる「おしゃべり」が大好きです。MCTを歩く時、相談で名取トレイルセンターやサテライト施設に伺った時など、各地でいろんな人と話したことが心に残ってますので一例をご紹介します。
①碁石海岸インフォメーションセンター
一関に住んでいた時に、足繁く通っていたのが「碁石海岸インフォメーションセンター」です。ハイクした後に次回のハイクの相談、マップの購入、ピンバッジの購入などとおしゃべりをする為によく行っていました。スタッフの村上さん、小松さんにはとてもお世話になりました。というか、今でも行っていたりします(笑)
特に村上さんには「MCTを全線踏破するまでは三重県に帰れませんね!」と温かいお言葉をいただいていて、その言葉を胸に今も歩いています。先日、2年ぶりに碁石海岸界隈を歩いたのですが、路地裏のルート、舗装路、遊歩道の景色を楽しみ、ハイカーと挨拶しながら最高の時間を過ごし、歩いた後は黒崎仙境温泉で汗を流しました。
やっぱり私のMCTハイクの原点はここだな」とあらためて思いました。
②みちのく潮風トレイル名取トレイルセンター
最近はもう月に何度行っているのだろうというくらいの頻度で訪問しています。
今年の正月明けには家族でも訪問しちゃいました。情報収集、ギア購入、キャンプ、イベント参加(たまに懇親会で料理作ってます)、おしゃべりなど、何でもできるのが最高です。
ハイク前には足りないギアがあると、「痒い所に手が届く品揃え」で手に入るのがありがたいです。物欲が止まらないのでついつい、買いすぎる時もありますが。。。そんな楽しい名取トレイルセンターですが、伺った時は板谷さん、柳田さんとお話していると話が尽きず、終わりません。終わろうとしてもまたしゃべりだす楽しさで。
そんな楽しい会話の中、先日柳田さんに「宮地さんが最初は山の恰好だったのがだんだんハイカーの恰好に変わってますよね」と言われた時、嬉しかったです。ここやハイカーズデポさんでお話聞きながら買い物したり、自分なりに考えたりしてきたことが形になってきているのかな、とも思います。
もう私も人生折り返し地点に来ていますが、まだまだハイカー進化への道を進みたいと思います!
③おとべ荘
今年1月の重茂半島攻略時に初めてお世話になったのですが、あまりの居心地の良さにそれからほぼ毎月ペースで伺ってます。
手入れの行き届いたお部屋、手の込んだ美味しい食事、温かいお風呂、そして女将さん、大女将さんとの尽きない会話、どれをとっても最高で素敵な時間を過ごさせていただいています。
先日は宿泊したハイカーの方々とハイク話で盛り上がり、時間を忘れるくらい、ほんと良い一時でした。帰り際、女将さんに「またお待ちしています」と言われると「来月来ます!」としか言えない良いお宿です。これからもお世話になります。
その他にもハイク中に声をかけて差し入れしていただいた方、立ち寄った飲食店での食事でのサービス、また来てな!と声をかけてくれた地元の方、心に残ったことは尽きないです。皆さんもそうだと思いますが、そんな素敵な出来事が数々起こるのがMCTだと思います。
Q:宮地さんにとってのみちのく潮風トレイルとは
私が東北地方に転勤になって偶然その存在を知り、歩くことになった。
でもそれは「偶然」ではなく「必然」だったのだと思います。もはや「運命」です!歩くために転勤したと言っても過言ではないくらいです(笑)。
そして歩いて生まれる様々な出会い。MCTのルートは憲章にある様に松川浦から蕪島まで歴史、震災の記憶、風景を繋ぎ、人々の交流を生む道だと強く思います。国内外の人が性別も年齢も家柄も国籍も・・なんて誰かの歌の様ですが、ほんと関係なくフラットな立場で交われる場所でもあります。
ルート上での他愛もない挨拶、会話、宿やイベントで名前も知らない人と語らい、酒を酌み交わす。こんなことができるのもMCTならではなのかな、と思います。
ハイク時もきれいな景色に感動し、震災遺構に涙し、美味しい食事を楽しみ、全ての人との出会いに感謝する。そしてただひたすらに歩く、歩く、立ち止まり、振り返り、また歩く。これを繰り返すことが幸せでたまりません。
全線踏破まで残り110㎞程度、蕪島でのゴールを想像すると少し泣けてきたりもします。でもまだ110㎞もの旅が待っているとも言えます。この先どんな景色、出会いが待っているのか。
こんなワクワクを与えてくれる「MCT」は私にとって「かけがえのないもの」です。
もちろん、家族の次に!単身赴任で好き勝手歩いていることに理解を示してくれている家族には感謝しかありません。
あとは優秀ではない勝手に宣伝マンとして、いろんなところで「MCT」を語って興味を持ってもらおうと活動しています。いつも「MCT」グッズを片手に宣伝していて先日は三重県帰省時に行きつけの美容室、ジャズ喫茶や保険屋さんにカレンダー、パンフレットを持って行って宣伝してきました。
少しでも興味を持ってもらって、魅力あふれる「MCT」へ、どんどんいろんなところから歩きに来て欲しいです。
そんな思いが溢れてくる、本当に「かけがえのないもの」が「みちのく潮風トレイル」です。もちろん、家族の次に。。。多分。。。
Q:今後どんな風に関わっていきたいか
ほぼほぼ語ってしまったところはあるのですが、先ずは今も参加させてもらってる清掃ボランティアやイベント時のお手伝いに積極的に参加してMCTを次世代に繋げていく活動に貢献したいと考えています。これは私も楽しく参加出来ていて、楽しみながらお役に立てるなら、こんな良いことはないと思っています。
またその他にも何かもっと力になれないかと考えていて、イベントや広報活動への協力はもとより、魅力を各地へ発信する為の仕掛けが出来たらと思ってます。そんな話は名取トレイルセンターやおとべ荘、イベント懇親会時の会話でも良くしてしていて、そのアイデアの中の一つでもカタチになって「MCT」の為になるのであればこんな嬉しいことはありません。
あとは得意な「おしゃべり」で人と人を繋ぎ、結んでいく草の根活動のようなこともやってみたいと思っています。私も欲張りなので、MCTだけでなく東北地方にいる間にこちらできることは、できるだけたくさん経験したいと思っています(他のトレイル歩き、狩猟などです)。
私の出来ることはたいしたことは無いのですが、この経験をもって「MCTの為に何か成し得る」ことが、私が東北地方へやってきた存在意義なんだと勝手に思っています。
幼いころ両親に教えられ登山を始め、学生時代も山を歩き、今、東北を歩いている。両親、家族、出会った人すべてに感謝し、まずは全線踏破を目指します。
と、その前に6月9日の宮古開催の「みちのく潮風トレイルウォーク」に参加予定です。いつもソロハイクですが、多くの方と歩く良さもありますよね。そして、またおとべ荘さんに泊まります。今から楽しみで仕方ありません!
最後に、みなさん「ENJOY HIKING!」