MCTハイカーズボイス

みちのく潮風トレイルハイカーズボイス No.3 

2022/10/01 みちのくトレイルクラブ
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みちのく潮風トレイルハイカーの皆さんから、歩くきっかけや道中の思い出などをお伺いしている「ハイカーズボイス」。
3組目は、ご夫妻でみちのく潮風トレイルをセクションハイクされている、濱口 哲さんと聡子さんです。お二人にはハイキングパスポートの楽しみ方を中心にお話を伺いました。
(取材日:2022年8月7日)



Q:歩き始めた時期ときっかけを教えてください。


(聡子さん)
 みちのく潮風トレイルを歩き始めたのは、2021年5月29日です。
 その少し前に、地元名取市の高校生が主催する「名取100人カイギ」というオンラインのコミュニティーイベントがあって、「面白そう!」と思って参加したところ、名取トレイルセンターの板谷センター長がスピーカーの一人でした。みちのく潮風トレイルをスルーハイクされた時のお話はもちろん、それを話す板谷さんがとても楽しそうだったのが印象的で、翌日さっそくセンターを訪問し板谷さんから詳しい話を聞きました。
 そして後日、夫婦で相馬市松川浦から相馬駅を目指して歩いてみることにしました。スタートしてからずいぶんと進んだところで完全にルートから外れていたことに気がつき、なんだかとても悔しかったので(笑)、正式なルートを探して松川浦まで引き返して歩いたというのが記念すべき初のトレイルハイキングでした。

Q:みちのく潮風トレイルにどんな魅力を感じていますか?


(聡子さん)
 自然が大きな魅力です。
 「この世には自分が知らないことがこんなにもあったんだ!」と思う機会がたくさんありました。同じ宮城県内でも平野部と沿岸部とで地形が大きく異なることや、植生の違いなどにも驚くことがありました。
 二人の出身地が長崎県と沖縄県で、その後札幌市に住んだこともあり、日本が南と北とで大きく違うことは経験を通して知っていましたが、「みちのく潮風トレイル」という東北の一本の道を歩いていて、ふと自分たちが「なだらかな変化の中に身を置いている」ように感じることが何度かありました。 
 セクションハイクで歩いているからこそ、季節の移り変わりが気になるようになりました。そして、トレイルを歩いていると、「地形や環境に合う産業がこの地域に発達し、暮らしや文化が生まれ、長い歴史が積み重なって今につながっているのだろうな」と考える時があります。
 体感して知ることは知識として知ることとは全然違います。もし歩いていなかったらこういったことはずっと分からなかったままだと思います。

(哲さん)
 地域の人達との会話の中で、地元愛を感じることがあります。
 私は故郷から離れているので、それを聞いて「自分も何かもっと大切にしなければならないのかな」と考え、名取市内の清掃活動に参加するようになりました。
 名取トレイルセンターを訪れる人たちのためにも何かできればいいなと思いますし、何より、トレイルを歩いていると「何かをもらっている」という感覚がいつもあって、こちらも返さなきゃという気持ちになるのです。

「ハイキングパスポートを使うようになって、さらにトレイル歩きが楽しくなりました。」
「ピンバッジを集めることもモチベーションにつながっているよね。」と話すお二人。

Q:パスポートはいつごろから使い始めましたか?


(哲さん)
 2022年の2~3月にモニター参加しました。初めてパスポートを持って訪れたのは、大船渡市内のとある食堂さんでした。そのお店はスタンプポイントではなかったんですが、お店にトレイルのマークがあったので、パスポートのことをお話ししたら、お店のハンコを快く押してくれました。妻は初めてということもあってためらいがあり、僕一人だけお願いしました(笑)。
 その後はパスポートの使い方にも慣れてきたので、スタンプポイントに立ち寄って二人のパスポートにそれぞれ押してもらっています。スタンプを押してもらう際に「みちのく潮風トレイルを歩いている」というキーワードで話しかけてもらったり会話が弾んだりすることがあります。

Q:パスポートによる発見や新しい出会いなどのエピソードがあればご紹介ください。


(聡子さん)
 ハイキングパスポートをきっかけに地域の方と話をすると、「来てくれて嬉しい」と言われることがあって、こちらも嬉しくなります。中には、「ハイカーさんがお腹を空かせて来ると思って」と注文したメニュー以外に一品サービスで付けてくださった優しい食堂の方もいらっしゃいました。
 パスポートの良いところは、今まで知らなかった施設や、旅行者にはハードルが高いんじゃないかと思えたりするようなお店にも、ハイカーウェルカムだと思うと入っていきやすくなるところだと思います。
 また、スタンプポイントではありませんが、岩手県には夫婦ですごく気に入ってトレイルのたびに数えきれないほど通っているハンバーガー屋さんがあります。ハイカーの夫婦ということで、顔を覚えていただけました。こういった方々にみちのく潮風トレイルを歩かなければ出会えなかったというところも面白いですし、自分の旅に地域の方が参加してくださることで、思い出がより深くなると思います。 
 パスポートで失敗したなと思っていることもあります。それは、お世話になった方々に名前を書いてもらえば良かったと今になって思うことです。全線踏破まで残すところ約140㎞(8月7日現在)となりましたが、最近はパスポートと一緒にサインペンも持ち歩くようにしています。

(哲さん)
 ハイカーが地元の人にたまたま出会えなくても、接点を作ってくれるのがこのパスポートの良いところだと思っています。偶然の出会いができなかった時ほど、こういった場を設けてもらえることで、出会いのきっかけが生まれるので、スタンプを置いてくださる場所が増えると嬉しいです。
 スタンプを集めてピンバッジを購入できることももちろん楽しみの一つではありますが、それが一番の目的ではなく、歩き旅の中に交流が生まれるきっかけとしてこれからもこのハイキングパスポートを楽しんで使っていきたいと思います。

濱口ご夫妻の思い出がたくさん詰まったハイキングパスポートは、この大船渡市のページから始まりました。



「みちのく潮風トレイル ハイキングパスポート」についての詳細は、こちらをご覧下さい。
https://m-tc.org/community/passport/

著者 : みちのくトレイルクラブ

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