トレイルメンテナンス

CCCとの協働トレイルメンテナンス_釜石市_石塚峠編②

2025/12/25 みちのくトレイルクラブ
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2025年9月からCalifornia Conservation Corp(CCC:カリフォルニア・コンサベーション・コー)が来日し、みちのく潮風トレイル上のメンテナンスを協働で行いました。

今回はCCCとの協働トレイルメンテナンスから「釜石市_石塚峠編②」を詳しくレポートしていきます。

概要

日時:2025年9月22日(月)~9月23日(火)
場所:釜石市_石塚峠(いしづかとうげ)
主催:一般社団法人大船渡地域戦略、NPO法人みちのくトレイルクラブ
参加者:CCC、釜石市、地元通訳の方々、みちのくトレイルクラブ
内容:
 1日目 トレイル調査
 2日目 トレイルメンテナンス

トレイル上の課題

石塚峠は、岩手県釜石市の平田と唐丹を結ぶ、江戸時代の南部藩(盛岡藩)と伊達藩(仙台藩)の国境です。 当時は双方の藩が「御番所」を置いて厳しく監視しており、今も峠には境界を示す「藩境印杭」の遺構が残っています。幕末には、重税に苦しむ南部藩の農民約4,000人が仙台領へ逃げ込んだ「三閉伊一揆」の越境ルートにもなりました。現在は歴史を感じるトレイルコースとして親しまれています。

2019年に発生した台風19号や、その後の大雨などの影響でトレイル上に大きな水路が発生し、トレイルが大きく崩落している箇所があります。石塚峠を越える道中には、そのような箇所が複数確認されていますが、今回は特に大きな2つの崩落箇所を整備することとしました。

崩落箇所A

元々は下の写真にあるように緑に塗った箇所がトレイルでしたが、大きな水路がトレイルを大きく削ってしまっています。特に水路がカーブしているところは水の勢いをダイレクトに受けるため、最も削れが大きく、人の身長の高さ以上の溝ができています。また、水はトレイル外に排出された後も谷下の川に合流するまで土壌や植生を削っています。山側にわずかに歩くスペースがありますが、幅は狭く安全に歩けるとは言い難い状況です。

  • 土壌や植生が損なわれている
  • 歩くスペースが狭くハイカーの安全性に問題がある
  • 景観が損なわれている
トレイル外に続く水路の状況(トレイル谷側から)

崩落箇所B

2023年11月の様子

崩落箇所Bは、崩落箇所Aの100メートルほど下ったところに位置します。
ここでも崩落箇所Aとほぼ同様の事象が起きています。

課題の発生原因

周辺を調査し、以下の点が発生原因と考えられました。

  • トレイルが谷にあり、水が集まりやすい地形である
  • 地質がもろい
  • トレイル自体の傾斜が大きく、水の流速が速くなりやすい
  • 水切りなどがなく、トレイルから水を排出しにくい

メンテナンス計画

次にメンテナンス計画に移ります。
方針はおよそ次の4点にまとめました。

  1. 水切りを設置し、トレイル内に流れ込む水量を減らす
  2. 削れた箇所を丸太や岩、枝、葉などで埋め戻し、水流を弱めて土が溜まるきっかけをつくる
  3. 水路と歩行路を分離する
  4. 歩行面をしっかりと確保し、ハイカーの安全性を守る

今回、水路と歩行路を分離することにしました。
山側は山側斜面から流れてくる水の影響を受けやすいため、通常、歩行路をつけるのは水路の谷側が望ましいとされています。ただ今回は、水路によって谷側の地形が大きく損なわれていることや、地形的に不安定なこと、木の根が張っていることなどの理由があったため、山側に歩行路をつけることにした。

メンテンナンス作業

二班に分かれて、崩落箇所Aと崩落箇所Bの作業に移ります。

崩落箇所Aで埋め戻しをする様子
崩落箇所Bで水切りを設置する様子

経過

作業は1日のみだったのでできることは限られていましたが、応急処置にはなったかと思います。
約2カ月後に現地を見にいくと、少しですが土が溜まっている様子が確認されました。地形も完全には戻っていませんが今のところ安定しています。

崩落箇所A

写真では確認しずらいですが、写真右側に丸太や岩、葉などを使って土留めをしています。2カ月後に訪れたときには土が堆積されているのが確認できました。写真でも分かるように崩落部分の地形がかなり回復してきています。

作業前
2025年9月23日
作業直後
2025年9月23日
作業約2か月後
2025年12月2日
作業前
2025年9月23日
作業中
2025年9月23日
作業直後
2025年9月23日

広くはないですが安定した歩行面が確保できました。2カ月後には枝葉に埋もれて分かりにくくなってしまっています。定期的なメンテナンスが必要です。

作業前
2025年9月23日
作業直後
2025年9月23日
作業約2か月後
2025年12月2日

崩落箇所B

崩落箇所Aと同様にこちらも写真右側に丸太や岩、葉などを使って土留めをしています。2カ月後に訪れたときには土が堆積されているのが確認できました。写真でも分かるように崩落部分の地形がかなり回復してきています。

作業前
2025年9月23日
作業直後
2025年9月23日
作業約2か月後
2025年12月2日

枝や岩、整地を行ったときに出た土を使って、水路の埋め戻しも行いました。その後、水によって大きく削られた箇所は確認されておらず、少しずつ地形が戻っていることが分かります。歩行路も枝や葉の堆積はありますが、十分な幅が確保されています。

作業前(下からの様子)
2023年11月29日
作業直後(上からの様子)
2025年9月23日
作業約2か月後(下からの様子)
2025年12月2日

水切りは設置2カ月後も特に異常はなかったが、上部に葉や枝が堆積していました。水が水切りを越えてくる可能性があるので、こちらも定期的なメンテナンスが必要となります。

作業直後
2025年9月23日
作業約2か月後
2025年12月2日

まとめ

石塚峠は、何百年も前から人が往来してきた道で、静かな森歩きが楽しめる素敵な場所です。一方で、みちのく潮風トレイルの中でも崩落箇所が大きく、大規模な修復作業が必要な箇所でもあります。今後も重点的にメンテナンスを継続して、自然を守りながら、ハイカーの皆さんが安全に自然とのつながりが感じられる道にしていきたいと思います。

三陸アクティブで夕食作りを楽しむCCCのメンバー

記事担当:松川亮太

著者 : みちのくトレイルクラブ

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