みちのく潮風トレイルハイカーの皆さんから、歩くきっかけや道中の思い出などをお伺いしている「ハイカーズボイス」。6回目は、松川浦環境公園から名取トレイルセンターまでのセクションをご夫婦で歩かれた麦倉さんが文章を寄せてくださったブログです。
歩き終わって名取トレイルセンターにお二人でいらっしゃった時に、「このセクションの楽しさを他のハイカーにも是非知ってほしい!」「そのためになにか出来ることがあればお手伝いをさせて欲しい!」との熱いお申し出から、このブログを書いていただけることになりました。
思わずにこにこしてしまうブログです。ぜひお読みください!
初めに
私は栃木県宇都宮市に住んでいる、麦倉と申します。みちのく潮風トレイルは、名取から石巻の区間を友人と歩き終えていたのですが、せっかくなので相馬〜名取も歩いて繋いでみようと、妻を誘いスタートしました。
そして、妻とのセクションハイクがあまりにも楽しかったので、図々しくも板谷さんに『ブログを書かせてもらえないか』とお願いし、ここに至ります。
栃木から月1回、車でスタート地点の駅まで行き、そこから歩き始め、隣の駅、もしくはそのまた隣の駅まで行って電車で戻ってくるというスタイルで歩きました。
そんな旅で思ったこと事や、感じた事を綴りましたので、お時間が許す様であればお付き合い下さい。
セクション1 「雅子と一緒に登山するから楽しいんですよ」
これは今の天皇陛下がご結婚後、登山について問われた時に返された言葉だ。
まさしく私もそうなのである。
妻と登山をしたり、歩くのが楽しいのだ。
しかし、そんな妻はガンガン山に登るわけでも、長い距離を歩くのが好きなわけでもない。山でいえば3、4時間程度の山行で満足で、それ以上は疲れるからちょっとなぁ、、、と渋るのがデフォである。
だが、私は妻と歩きたいのだ!楽しさを共有したいのだ!ということで、色々模索して行き着いたのが
みちのく潮風トレイルなのである!
別にスルーハイクするわけじゃないし、トレイル上に常磐線があるからいつでもエスケープできるし、街を歩くルートもあるので補給もできるし、なんせ山じゃなくて殆ど平坦な道だし(山セクションもあるけど、まぁそこは上手いこと言いくるめよう)
こうして、相馬からスタートし、名取トレイルセンターをゴールとする、喜怒哀楽と晴天、曇天、雪、嵐と全てを体験した旅は始まったのである!
と言っても、相馬〜名取の区間距離は97キロある。
みちのく潮風トレイルのオフィシャルのハイキングマップを見ると、97キロを9分割されて、大体1つの街ごとにルートが載っている。
みちのく潮風トレイルのオフィシャルマップ。これは、我々が歩いた相馬〜名取のマップ。この区間を、MAP10-1からMAP10-9というように9つに分割して載せている。
なので、1回で1分割分ぐらい歩ければ良いかなと思い計画を立てたが、それでも約20キロ近く歩くことになる。
長距離を歩きたがらない妻には、平地だし楽勝だよ!とか、美味いもの食いながら行こう!とか、あれやこれやプレゼンして重い腰を上げさせた。(3回目ぐらいから、妻は10キロぐらいなら何てことないと思い始めた。素晴らしい成長ぶりである)
セクション2 あぁ無常
いざ!期待を胸に歩き始める。人生初のロングトレイル。
色々な出会いや体験が待っていると、妻と二人胸を躍らせ出発するも、昼休憩でやってない飲食店、2、3分差で乗れなかったバス、平日は休みの商店、すれ違う人の物珍しそうな視線、強風で電車ストップ、その他諸々の思った通りに行かない出来事だらけ。
Google先生が教えてくれる情報なんて、地方では役に立たないのである。実際目で見て、耳で聞いたものが全てなのだ!
そして、平地が多いとはいえ20キロ前後の距離を歩くと言うのは、思ったよりも疲れるのである。
我々は、毎週のようにどこかの山に登ったり、歩いたりしているわけではない。寧ろ私はゲームが大好き、妻はテレビっ子という筋金入りのインドアLOVE夫婦である。(決して、アウトドアが嫌いというわけではい。ただ家が本当に好きなだけ)
そりゃ疲れるに決まっている。
だが、止めようという気持ちにはならなかった。
そんな思うように行かない出来事や疲れも、なんだか笑っちゃうなという感じで全て楽しかったのである!まさにロールプレイングゲームと同じだと思ったら、さらにテンションは上がったのであった。
セクション3 ロングトレイルという名の奇跡の歩き旅
トレイル上で1番面白かったのは、人との交流であった。
トレイルを歩くにあたり我々夫婦は、極力怪しまれないように、行く先々で挨拶できるタイミングの時は、にこやかに挨拶をしていった。普通に考えて、車社会の田舎においてリュック背負って何もない道を歩いていくという行為は、そこに住んでる人からすれば、怪しまれても仕方がないのである。ましてや、地元の人しか通らなそうな道は尚更である。
なので挨拶をして、少しでも会話をすることで我々は怪しくないハイカーです!みちのく潮風トレイルというカルチャーがあるんですという発信を心掛けていた。
商店のおばちゃん、家の前を掃除してたおじちゃん、各町のタクシーの運転手さん、畑仕事してるおばちゃん、各スタンプポイントの役所の人や、お店の人。とにかく色んな人と話した。(因みに、タクシーは前回のトレイル離脱のポイントまでの移動で使った)
そこで必ず聞かれたのが、
どっから来たんだい?である。
栃木からきました〜、みちのくトレイルを歩いてるんですよ!と答えると、そーいえばなんだかトレイルを歩いてるっていう人いたなぁ、とか
何?そーいう歩くコースがあんの?といった知らない人に、みちのくトレイルの説明を情熱的に語った。
そして、栃木は〇〇に行ったことがあるよ、というような会話になり、ローカルトークに花が咲く。みちのく潮風トレイルを歩かなければ無かった時間なのだ。まさに奇跡といえよう。
セクション4 相馬〜名取は特別を気づかせてくれる
2023年の11月から、月に1回というペースで2024年の5月に名取トレイルセンターに到着した。
冒頭でも言ったように、1回の歩きで1、2駅分進み、その日の最後はコースから外れ、駅まで歩く。
こんなことを繰り返してたら、相馬〜名取の総距離は97キロなはずなのに、我々が歩いた総距離は120キロであった。
この寄り道のおかげで、さらに色々な人との出会いもあったし、我々が大好物な個人商店も発見したし、各町の今を見れたし、改めてみちのく潮風トレイルを歩いて良かったと思った。
この相馬〜名取間を歩いた人たちの感想を見ると、町歩きだからとか平坦だからとか、本当にただの通過点でしかないと思われる内容のものが多々見受けられた。
まぁ、いろんな人がいるので感想なんてのは十人十色なのは重々承知だが、これほど住んでる人たちの生活を身近に見て感じながら歩くって中々ないでしょ!と思った。いろんな人とも話せるし、見るとこだらけですよ!と。
町から町へ、人と交流しながらというのは、自分の住んでいる場所でも出来るが、じゃあやるかと言われたらやらないだろう。
当たり前すぎるというか、今更何があるんだ?と、思っちゃうというか、なかなかやらないと思う。(勿論、それをやろうという人もいると思うが)
でも、自分の街に名のついたトレイルがあったとして、他から来た人がそこを歩いたら、きっと特別だと思ってくれるかもしれない。そう考えると、全てが当たり前じゃないのだ。当たり前の景色なんてないのである。
この相馬から名取の区間は、何気ない地方の田舎の景色の中に、特別がいっぱい詰まったトレイルだった。我々夫婦にとって、とても思い出深く大切なルートとなった。
セクション5 我々の足跡
ここで、我々夫婦のお気に入りポイントいくつか紹介したい。
新地町にあるパン屋、ボヌールやすひろ66。次から次へとお客さんがくる人気店。惣菜パンから、甘いパンまで最高に美味かった。特にカステラサンドは疲れた体に染みた。
これも新地町にある、福田諏訪神社。私たち夫婦は、理由はないが初詣に行かない。しかし、ここを訪れた時は1月だったので行ってみた。みちのく潮風トレイルが、そういう気持ちにさせてくれたのであろう。
山元町にある磯崎山公園。トレイルから少し外れるが、海が一望できて最高の場所。ここで食べた昼食はヤマザキデイリーのパンであったが格別であった。江戸時代に外国船を監視する目的で作られた場所でもある。歴史に想いを馳せられる場所の1つ。
山元町にある震災遺構中浜小学校。自分も親戚が大船渡に住んでいて、地震後訪れて色々と見聞きしていたので、このブログでは震災関連の事にはあえて触れていない。しかし、ここに行って実際に色んな体験談や説明を聞いて、改めて驚いたし考えさせられた。説明してくれた方が、熱の入った話をしてくれたので、予定より長い時間滞在した。おかげで、体力がかなり回復したのを憶えている。
深山からの景色。奥に見えるのは、蔵王連峰。深山から四方山、黒森山、閑居山へと続く登山道は蔵王連峰を見ながら歩ける最高のトレイルであった。道も歩きやすく、地元の人に愛されているなぁと感じた。
亘理から岩沼へ、阿武隈川沿いを歩く。4月、ここから岩沼駅まで歩いた時は最高の天気だったが、5月に阿武隈橋から歩き始めた時は、横殴りの雨の中を歩くというただの苦行であった。大変ではあったが、振り返ると旅のドラマチックな演出として最高のスパイスになった。もう味わいたくないが。。。
ルートからまた少し外れて、美田園にあるスーパーホテル。横殴りの雨の中歩いて、心身ともに疲れていた我々を最高に癒してくれたビジネスホテル。冗談抜きで最高だった。ちなみに夕食をこの近くにある旬菜ダイニングkitchen比呂で頂いたのだが、本当に美味しかった。。
市道閖上南北線の下をくぐった所の景色。名取トレイルセンターも見えてきて、この旅ももう終わりが近いと、色々思い出しながら歩いた。因みに爆風の中を歩いている。。。。
5月17日、到着。11月から、8回に分けてのゴール。(5月は1泊2日にしたので、行動日で考えると8日間)インドア大好きな我々夫婦にとっては、満足感のある最高の旅であった。
この旅で、一番寄りたかったと言っても過言ではない、いわぬまひつじ村。雨で羊がいなかったので、次の日に改めて寄った。楽しすぎて、羊にあげる餌に1000円ぐらい使ってしまった。また行きたい。顔の黒い羊はマジでかわいい。
ラストセクション 今後は。。。。
今の所、妻と一緒に全区間を歩こうとは全く思っていない。しかし、親戚の家がある大船渡のセクションは、遊びに行ったついでに歩いてみようと思っている。
歩くからには全線踏破したほうが良い!という気持ちもわかるが、我々夫婦は2人で行けそうな所を行く、というセクションハイクで物凄い満足感を得られるので、これからもそういうスタイルで歩いていこうと思う。
むしろ、ハイキング以外にもゲームだ何だと、色々とやりたい我々にはセクションハイクは丁度良い。ライフスタイルにマッチしていると感じた。
少しずつ歩いて繋げて行くという楽しみを教えてくれた、みちのく潮風トレイルには感謝の気持ちでいっぱいである。
もし、少しでもみちのく潮風トレイルを歩きたいという人がいれば、気負わず、とにかく歩いてみてほしい。
大変だったら、帰ればいいのだから。目標に向かってとか、そういう事にこだわらないで疲れたら帰ればいい。そのくらいの気持ちで、歩き始めてほしい。
めちゃくちゃ距離を歩く人も、ウルトラ速く歩く人も、別にみんな一緒のハイカーなのだ。何も変わらない。大切なことは、歩き始めたあなたの中にあるのだ。
と、このあたりで締めたいと思う。最後まで読んでくれた、あなた。
本当にありがとうございました。