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危険生物について「スズメバチ編」

2024/08/23 みちのくトレイルクラブ
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みちのくトレイルクラブの板谷です。
今回取り上げる危険生物は、僕的には一番恐ろしい思いをした生物、スズメバチです。
数年前の夏、北海道の山中で500mぐらいしつこくぐるぐる飛び回るスズメバチに追いかけられるという、とても怖い体験をしています。
幸いなことに刺されはしなかったのですが、信じられないぐらい長い時間、長い距離を追いかけられて、最後には刺されることも覚悟して、泣きそうになりながら走っていました。
そんな身近に存在する怖い生物、スズメバチについて今回は紹介していきます。

スズメバチの習性

■日本には17種類のスズメバチがいて、概ね攻撃性が高い性質を持っています。
スズメバチの刺傷による死亡例はクマや毒蛇による死亡例より多く、毎年30名〜40名の方が亡くなっています。

■活動時期は5月〜10月。その中でも働き蜂が最も多くなり次世代の為に巣を守る時期、8月〜9月に刺傷被害が多くなります。

■巣を作る場所は種類によって多少の差はありますが、住宅の軒下、樹木の枝、土の中、木の根っこ付近、木の洞の中など。

■通常は巣から10mの範囲内で動き、パトロールをします。不審者を発見すると周囲を飛び回り、威嚇行動を行って追い払います。

スズメバチから攻撃されないために

■巣に近づいてきた者の周囲を警戒して飛び回ります。通常は1〜2周して問題なければそのまま飛び去ります。
たまに目の前でホバリングして様子を伺うこともあるようです。この時に、驚いてはたいたり腕を大きく振ったりすると、スズメバチが攻撃体制に入ってしまいます。
急激な動きや大きな音に反応するので、走らず、騒がず、身を低くしてその場から離れるのが良いようです。

■匂いにも反応します。山や森に入る時には、香水、化粧品、洗剤、柔軟剤、整髪料など、良い匂いがする物を出来るだけ付けない方が得策です。また、スズメバチの存在が近い時はジュースやガムなどの甘い匂いにも気を付けたいところです。

■黒っぽいものに反応します。一説には天敵のクマの色が黒だから、というものがありますが真偽は定かではありません。
黒っぽい服、暗色の服を避けて白っぽい服、明るい色の服を着ていた方が安全なようです。同じ理由から、黒髪を隠すために帽子を被った方が良いようです。
また、刺された場合の被害を最小限に抑えるために、長パンツ、長袖など、肌の露出を抑えた服装が望ましいです。

■屋外の東屋の軒先やベンチやテーブルの下に巣を作っている可能性もあります。休憩する前にスズメバチの往来がないかなど、周りを注意深く観察することも必要です。

こうして調べてみると、北海道で追いかけられた時の私はスズメバチに攻撃されても仕方がない条件を自らいくつか揃えてしまっていました。
・暗色の服  
確かこの時は紺色の帽子、紺色のTシャツを着用していました。背負っていたバックパックも、自分では緑色の認識でいましたが改めて見ると外ポケットが黒色で、外側に出ているのはほとんど黒。全体として黒っぽい男でした。
・激しい動き 
とにかく遠くに逃げようと必死で走っていました。気持ち姿勢を低くしていたつもりでしたが、激しい動きになっていたのかもしれません。
・大きな音 
悲鳴こそ上げませんでしたが、必死で走っていたのでバックパックに付けた熊鈴がけたたましい音で鳴っていました。大きな音でスズメバチが興奮してしまった可能性があります。

熊鈴をけたたましく鳴らしながら、体勢をやや低くして必死で走る黒っぽいおじさん。
本当に刺されなくて良かったと思います。もしかしたらバックパックあたりが刺されていたのかもしれないですね。

もしもスズメバチに刺されてしまったら

応急処置

■流水で傷口を絞りながら洗い流す。ポイズンリムーバーがあれば使用して毒を吸い出す。
口で毒を吸うのは厳禁です。口内に傷口があった場合、そこから体内に毒が入ってしまいます。

■抗ヒスタミン軟膏の塗布。

■冷却。

※アンモニアが効くというのは全くの迷信だそうです。子供の頃、ハチに刺されたらおしっこをかけると良いなどと得意気に言っていたものですが、お恥ずかしい限りです。

アナフィラキシーショック

ハチに刺された時に、体質によって「全身性のアレルギー症状」が出ることがあります。
刺された所以外の腫れや蕁麻疹、ひどい場合は呼吸困難や意識が遠のくような重篤な症状を引き起こす場合もあります。
最悪の場合は死に至る場合もあります。これが恐ろしいアナフィラキシーショックです。
息苦しさや口の乾き、冷や汗、めまい、血圧低下、しびれ、嘔吐、じんましんなどのショック症状が現れた場合は、一刻も早く救急病院で医師の診察を受けて下さい。

ただ、アナフィラキシーショックはアレルギー症状なので人によって出るか出ないかはまちまちで、2回目だからと言って必ず発症するというわけでもないようです。
まずは落ち着いて対処することが必要です。

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とても怖いスズメバチですが、彼らもまた人間を襲うために生きているわけではありません。
自分たちの生活圏内に侵入してきた外敵を追い払うため、自分たちが生きるために攻撃してくるのです。また、農作物や植木の害虫を幼虫の餌として狩りをしている、益虫という側面も実は持っています。
私たちの事前の準備、対処の仕方によっては、不幸な事故を未然に防ぐことが出来ます。

今はスズメバチが最も神経質になると言われている8月です。 みちのく潮風トレイルハイカーの皆さまは、「色・匂い・動き・音」の4つのポイントに気を付けながら、スズメバチに刺さされて危険な状態に陥るようなことがないよう、ハイキングを楽しんでいただけるようお願いいたします。
HAPPY TRAILS!

著者 : みちのくトレイルクラブ

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