スタッフコラム

「日本博2.0」受託事業 -東北沿岸の文化の磨き上げ-

2023/06/30 みちのくトレイルクラブ
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文化庁の「日本博2.0を契機とする文化資源コンテンツ創生事業」の受託事業に採択していただき、『みちのく潮風トレイルを歩く旅を通じ東北沿岸の文化を磨き上げ堪能する滞在満足度向上事業』を実施しています。

①【旅行商品の造成】、②【プロモーション】、③【fam trip】、④【シンポジウムの開催】が今年度の4つの取り組みです。

先月(2023年5月)のメールニュースの「トレイルから|ON THE TRAIL:・イギリス人記者James Clark氏、みちのく潮風トレイル撮影の旅」で紹介されているJames Clark、Robert McKane両氏の撮影取材は②【プロモーション】の一環として招聘しました。

6月のメールニュースでも取り上げましたが、①【旅行商品の造成】については、6月5日から9日の4日間、海外旅行会社のエージェントの方々にインバウンドのお客様を対象とする旅行商品を企画するための調査として、トレイルルートを歩き、加えて、地域の郷土芸能や食文化の体験をしていただきました。


1日目:八戸区間
 陸奥湊駅前朝市で朝食
 八戸酒造 酒蔵見学
 蕪島~大須賀海岸~種差海岸 ハイキング
2日目:久慈・普代区間
 田子の木遊歩道 ハイキング
 野田村:農家食堂つきや 田舎料理の昼食
 普代村商店街~普代水門(震災伝承施設)~ネダリ浜 ハイキング
 普代村 鵜鳥神楽(国指定 無形民俗文化財) 見学
 3日目:北山崎・田野畑区間
  北山崎自然歩道、北山浜 ハイキング
  机浜 サッパ船体験
  明戸震災遺構 見学
 4日目:宮古区間
  浄土ヶ浜 ハイキング
  大槌 篝火虎舞 見学
 5日目:大船渡・気仙沼区間
  (雨天のためハイキング中止)
  普門寺 境内散策
  気仙大工左官伝承館、気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館 見学

サッパ船体験中、海に虹が。

みちのく潮風トレイル各ルートのハイキングは、言わずもがな、大須賀海岸に代表される長く続く海岸線や田野畑の海岸線に見られる海岸段丘を望みながら、またハマヒルガオなどの海浜植物、ニッコウキスゲ、アカマツ、ナラなどの深緑の広葉樹林に囲まれてのハイキングでした。

 「歩く旅を通じ東北沿岸の文化を磨き上げ堪能する滞在満足度向上」と事業名にもあるように、自然に触れながら歩くだけではなく「地域の歴史・文化に触れる。その意義価値を深掘りする。」ということを今回の事業では最大の目的としています。上記のスケジュールにも記載した通り、今回は「普代村 鵜鳥神楽」と「大槌虎舞」を体感してもらいました。

鵜鳥神楽は、通常1月から3月の間で三陸沿岸の久慈市から宮古市の間を巡業する「陸中沿岸地方の廻り神楽」です。特に「恵比寿舞」という演目は娯楽が少なかった時代の一大エンターテイメントで、神楽衆と演者が共に演ずる場面もありました。近年は新型コロナウィルスの影響で巡業の機会がなくなっているとのこと。また、巡業時に神楽を行うのは各家庭(神楽宿という)が主で、昨今の生活意識の変化によりその引き受け先そのものが減少してしまい、巡業そのものの継続が難しい状態です。また、最近は神楽衆が減少し、特に体力がとされる演舞者の若者は少ない。そんな状況でも当日に神楽を舞った保存会の神楽衆は20代の若者たちで、子どものころから神楽を見て育ち、憧れて保存会に入ったことなど、神楽の後には神楽衆との交流しさまざまなお話を聞かせていただきました。

神社に併設される厳かな神楽殿で舞を見学した鵜鳥神楽と違い、小槌神社境内で見学した大槌虎舞は、演者、奏者、お囃子、そして若い演者たちをサポートしている大人たち、合わせて2,30人程の保存会の方々に出迎えいただきました。バスがついたらお祭りのようにたくさんの人に笑顔で出迎えられてエージェントの皆さんもびっくり!20歳前後の若者の演者が10分程の間、縦横無尽に踊りまわるのを眼前で鑑賞しました。若者の演者たちは、その場の状況、見学者の反応を見ながら臨機応変に対応しているそうです。虎舞は子ども達から見て「格好いい」、「将来自分も演じてみたい」と思わせる魅力があるものだと感じました。震災後の地域を支える役割も果たしたそうです。いずれも自分が暮らしている地域の歴史・文化を絶やさず、次代に引き継ごうとしている姿がありました。

鵜鳥神楽衆との対談
虎舞の演者と奏者

海外にはPacific Crest TrailやAppalachian Trail、Te Araroaなどの年間に数百~数千人が歩くロングディスタンストレイルがあります。みちのく潮風トレイルは、国外はもとより国内での認知度もまだそれほど高くありませんが、海外のトレイルに比べて、人の生活圏に近く、それだけ歴史・文化・そこに住まう人々に触れる機会の多いトレイルだと思います。

日本を代表するナショナルトレイルとして世界中の沢山のハイカーに歩いてもらい、そして、トレイル沿線の皆さん・歴史・文化に触れていただき、未来への継承の一助になれば嬉しいと思います。

「皆が育てる道」であり、そして「皆が訪れる三陸」であるみちのく潮風トレイル。歩いた際、または再び訪れて、地域のさまざまな歴史文化を堪能してください。

著者 : みちのくトレイルクラブ

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