English follows Japanese.
地球上の冒険と発見をテーマに、各国でローカル版を展開するアメリカの世界的有力誌「National Geographic(ナショナルジ オグラフィック)」
みちのく潮風トレイルや震災から10年を経た東北について、みちのくトレイルクラブ事務局長の相澤を取材していただいた記事が、National Geographic UKのWebページのTravel Category(イギリス版ナショナルジオグラフィックのトラベルコーナー)にアップされました。
記事(英文)はこちらからご覧いただけます。
以下、記事の日本語訳となっております。
ぜひご一読ください。
We are very proud to share that an article about Michinoku Trail Club Managing Director Kumi Aizawa, the Michinoku Coastal Trail, and about Tohoku 10 years after the 2011 tsunami is now online on National Geographic UK’s Travel Category section.
You can read the original English article here, and/or take a look at the Japanese translation we’ve provided below.
相澤久美さんにインタビュー:2011年の津波を乗り越え、ますます強くなっていく東北
東北の復興をライフワークにしている久美さん。かつて住んでいた地域の再生、地域の方々の寛大な精神、 そして600マイルも続く「みちのく潮風トレイル」の話を伺う。
By JNTO(日本政府観光局)
相澤久美さんは多くの肩書き(建築家、通訳者、編集者、出版業者と防災・復興を専門にしているドキュメンタリープロデューサー)を持ち、現在東京で二人の子供を育てながら、心のふるさとでもある東北に力を注いでいます。2011年3月11日に発生した地震と津波は東北の沿岸部に大きな被害をもたらし、18,000人以上が亡くなったといいます。相澤さんはNPO法人みちのくトレイルクラブの常務理事として、ある長距離自然歩道の管理運営と利用促進を行っています。この「みちのく潮風トレイル」は日本の中で最もが自然豊かで景色が美しい場所の一つでもある地域への集客を目指すだけでなく、その交流によって震災を体験した人々が癒されること期待されています。
3月11日2011年、震災が発生した時はどちらに?
私は当時東京にいました。補強したばかりのビルの7階にいて、ものすごい揺れを感じました。周りのビルもそのビルも本当に長い間ずっと揺れていて、周りの人に「このビルは大丈夫だ」と言っていましたが、内心、(もっと長く続けば大丈夫じゃないかもしれない)と心配していた記憶があります。その揺れは3分以上続いて、本当に怖い経験でした。
震災後は、東北のそれぞれのコミュニティはどのように集まって助け合ったのでしょうか?
たくさんの方々が全てを失ってしまいましたが、そのためお互い助け合い、支え合ったと思います。日本人にはそういう傾向があります。震災前はお互いあまりよく知らなかった人たちが、震災後とても親しくなったという話も聞いています。震災があったから、地域内でお互い出会って、地域外の人にも会って、皆で一緒に地域の再建に取り組みました。
10年後の今になって、東北はどういう風に変わったと思いますか?
現在の東北は全くと言っていいほど変わりました。その一方で、物理的な復旧工事が完成に近い状態であっても、精神的な復興はまだ遠い未来の話ではないかとも言えます。一般的に日本では自分の感情を表に出さない方が多く、震災の話をしたくないという方々はまだ沢山いらっしゃいます。
みちのく潮風トレイルについて教えてください。
みちのく潮風トレイルは青森県の八戸市から福島県の相馬市まで続く600マイル以上のロングトレイルのことで、全部を歩くのには約50日かかります。2019年にトレイルが全線開通してから全線踏破した方は約40~50人います。みちのく潮風トレイルは自然豊かな場所、小さな村や大きめの町、多くの半島と山を通るバラエティ豊かなルート設定になっています。フレンドリーで優しい地元の人々に出会えます。この東北の人々のフレンドリーさや優しさの一部は、震災後に支援されたという背景があるかもしれません。沢山の人々が国内外から来て、支援して下さったことへの恩返しをしたいと思っているからではないでしょうか。
トレイルの一番の魅力は?
誰もが関われることですね。小さな子供でさえ通りすぎるハイカーに近づいて来て挨拶をしてくれます。そして、それは訪れる側にとって嬉しさに繋がります。私が歩いている時も、時々田んぼからおじいちゃんやおばあちゃんが話しかけてくれて、立ち止まってちょっとした世間話をしてからまた先へ進むことがありました。トレイルは誰でも参加、貢献できるのが特徴で、地域への誇りを形にできる機会でもあります。
もう一つは、地域の人にとって震災で何があったのかについて話すのはとても難しいことなのですが、外部から歩きに来たハイカーは、心の距離感も手伝ってより話しやすい相手である場合があります。震災を体験していないハイカーだからこそ、地元の方が話したかった事を言えるきっかけにもなるのではないかと思います。
東北に旅行した際に、どんな他の体験ができますか?
もう一つの大きな魅力は各地域の伝統芸能です。鹿踊(ししおどり)や虎舞など、何千種類もあります。また、東北は漁業が盛んですが、海での仕事は危険も伴うということで、海へ出発する前に漁師さんは安全を祈願する神事を行います。その神事の時も美しい伝統芸能が披露されます。伝統芸能や祭りは震災後、人々の心を支えたとも言えます。ずっと昔から続き、深く愛されていました。人々にとって生活の大事な一部分で、全てを失ってしまった時も、その音やリズムは心の中に残っていました。踊りや祭りが復活すると、みんな大喜びで、そして安心しました。何もかも無くなってしまったけれど、人生の大切なものが復活した、と。
東北の一番好きなところは?
郷土料理、特に海の幸が好きです。刺身が新鮮で、全国で食べられている多くのものがこの地域から来ています。私は東京に住んでいますが、多くの魚介類と海藻は東北のものを買っています。景色ももちろん美しいですが、やはり人々が一番で好きです。お隣さんが野菜や魚をくださったり、自分がお返しにお米をあげたり。そういうお互いを支え合うという生き方が素晴らしいと思います。
東北をじっくり体験するには?
歩くのが一番ですね。自分の足で一歩ずつ歩くなら、周りのもの全てに気が付きます。地元の方に出会ったり、お花の匂いを嗅いだりして、周りの世界に没頭できます。そうして歩くことによって、その地域に何が起きて、津波が地形にどういう影響を与えたか、そして人々がどういう風に粘り強く乗り越えてきたかを本当に理解できると思います。
東北にはどんな未来が待っていると思いますか?
東北は持続可能な地域のモデルになると思いますし、何よりも災害に直面した粘り強さと忍耐力のシンボルになると期待しています。